よくわかる!リモートプレビューによるポストプロダクション〜編集・MA実践編〜
本記事は2020年8月5日に、note.imagicalab.co.jpに公開された記事を再編したものです。記事内容及び社名は当時のものです。
「編集室にいかなくてもプレビューはできるはず」ですが、ポストプロダクションにおける本編集やMAの作業では、セキュリティや画質・安定的な視聴など超えなければならないハードルが多く、一筋縄ではいかない現実があります。
この記事では「リモートプレビュー」をめぐる課題を整理して、三密を回避しつつ立会い編集やMAのポストプロダクション作業を行う方法をご紹介します。
リモートプレビュー3つの課題
遠隔で作業しながらプレビューを成立させるために、超えなくてはならないハードルを整理すると概ね以下の3つに集約されていきます。
1.「セキュリティ」
当然未公開の作品を扱うため、また公開されない素材をプレビューすることもあり外部への漏洩や、外部からの侵入というリスクを管理しなくてはなりません。
2.「映像品質」
完成品を作るポスプロ作業なので、映像の品質が確認できなくては意味がありません。しかも繰り返し行うプレビューにおいては、低遅延(タイムラグが少ない)ことも重要です。
3.「コミュニケーション」
プレビューを行なった結果のフィードバックを伝えねばならないため、スムーズなコミュニケーションを実現するためのツールが必要です。
これらの3要素はお互いに絡み合いながら、リモート作業の難しさを構成しています。
ファイルのやりとりをする(ファイルプレビュー)よりも、スピーディーかつタイムリーにできるリモートプレビューはこれまでもさまざまなシーンでご利用のニーズがありました。
IMAGICA Lab.では2014年ごろから、デイリーやオフライン編集、VFXカットのチェックなど、さまざまなシーンでニーズのあったリモートプレビューの課題に取り組んできました。
ニューノーマル対応が求められている昨今では利用状況が違いますが、これまでの経験を活かしてより良い方法を探求しています。
ライブストリーミング+コミュニケーションツール
日々いろいろなサービスが登場するので常に変化していきますが、現状ではストリーミングサービスとオンライン会議室のサービスを組み合わせる方法が合格点に近い解決策になっています。
上記の図の方法では、Vimeo(ビメオ)に対して編集室から信号を送り、ストリーミングの映像を視聴いただけるようにします。
オンライン会議室を「バーチャル編集室」に見立てて、その中でストリーミングされる映像についてのコミュニケーションを行います。
この方法なら、3つの課題をある程度解決でき、それでいてご利用いただくお客様にも、
・かんたんにアクセス
・個人情報のやりとりが最低限
・クライアントやエージェンシーの方も含め操作が難しくない
というメリットを確保できます。
オンライン会議室の入室管理
オンライン会議室のセットは、編集室やMA室への入室を管理するのと同様に「入室のリクエスト」を承認できる方がセットいただけるとスムーズです。
ポストプロダクションのスタッフもその会議室にご招待いただけると、スタッフからストリーミングのURLとパスワードを供給することができます。
Vimeoを使ったストリーミング
2020年7月現在、Vimeoのストリーミングではある程度の「遅延」を受け入れるしかありません。
実感としては20秒程度のタイムラグ(編集室側で再生してから、視聴側で動き始めるまで)がありますが、実はこのバッファリングのおかげでコマ落ちがなく安定した再生ができます。
しかし、このタイムラグがあると短い尺の細かい修正ではバッファリング待ちが頻繁に発生することになります。CGや合成のカットのプレビューなどの場合、WebRTCベースで低遅延を実現しているEvercast(エバーキャスト)に軍配が上がります。(Evercastもご利用いただけます)
取り扱う映像の内容に応じてストリーミングの手段を選択できますが、総合的にはVimeoに落ち着くケースが多い傾向です。
コミュニケーションのポイント
オンラインミーティングについては慣れてきた方も多いかと思いますが、スムーズなコミュニケーションのためにいくつかコツがあります。
同時発話に気をつける
どんなサービスを使ってもオンラインミーティングのシステムでは、同時発話は「複数の音声はMixされちゃう」のです。
それぞれのPCのマイクに向けて同時に複数の人が音声を入力するとシステム側で1本の音声チャンネルに自動的にMixされてしまうため、ほとんど聞き取れなくなってしまいます。
人間の聴力はリアル空間であれば、複数の音源の中から聞きたい音だけに意識を集中して聞き取ることができます。(カクテルパーティー効果。ロックバンドの楽曲の中でもギターだけ、ベースだけ聞き分けることができたりします)
しかし、人の声のように近い周波数(400〜1kHz)の音がMixされた状態で一つのスピーカーから流れてくる場合、それを分解して聞き分けるのはさすがに難しいのです。
ということで、誰かが話している時はその話が終わるまで待つのが一つの解決策です。
「手を挙げる」ルール化のすすめ
とはいえ、短い時間の中で完成度の高い作品を仕上げていくにはタイムリーで精度の高いコミュニケーションが不可欠です。
大変失礼ながら誰かの発言の途中であっても、遮って割り込んだ方が良い結論に早くたどり着くこともあります。オンラインミーティングのツールでその割り込みを声でやろうとすると、二度同じことを話すという手間が発生してしまいます。
そこで「手を挙げる」というアクションをルール化するとよいでしょう。
これはZoomには機能としてボタンが設置されていますが、Google Meetの場合もチャットに「ちょっといいですか(挙手)」といった定型文を投げることで同じような効果があります。
元々はオンラインセミナーなどの場合で質問者を指名する場合の利用を想定した機能のようなので、やはり司会者やファシリテーターの役割を設定しておくとスムーズにやりとりできるようになります。
リモートポストプロダクションの作業は発展途上ですが、まずどうにか「リモートプレビュー」が実用レベルに達しつつあります。これからも、映像作品の仕上げ作業をより安全かつ便利に(できればコストは安く!)できるように細かく工夫を重ねていきます。
「リモートやってみるか」とおもったら、お気軽にお問い合わせください。ご質問やご相談も承ります。